「子どもが生まれたら学資保険。これは常識ですよね」
出産後の入院中に銀行の担当者から連絡が来て、勧められるまま学資保険に加入した——そんな方が今でも少なくありません。
その判断が間違いとは言いません。しかし私は銀行・コンサルの立場から、金融機関が学資保険のような貯蓄型商品を「なぜ売りたいのか」という収益構造を見てきました。正直に言います。
学資保険は、銀行にとって「美味しい商品」です。顧客にとっては、必ずしもそうではない。
返戻率107%という数字だけ見れば「得している気がする」かもしれません。しかし、その107%を年利に換算すると約0.4%です。一方、新NISAで全世界株式インデックスを18年積み立てた場合の期待利回りは5〜7%。
この差が、18年後にどれだけの金額の差になるか——今日は感情論を抜きに、数字だけで答えを出します。
この記事はこんな方におすすめ
- 子どもが生まれて「学資保険かNISAか」で悩んでいる方
- すでに学資保険に加入しているが、続けるべきか見直すべきか迷っている方
- 「学資保険はいつでも解約できる」と思っている方(要注意です)
- 教育資金の「最適解」を数字ベースで判断したい共働き世帯
目次
- まず「学資保険の実質利回り」を計算してみる
- 18年後の差額を直視する【シミュレーション完全比較】
- インフレが加わると学資保険の「本当の損失」が見えてくる
- 学資保険が「完全に無駄」ではない3つの理由
- 新NISAで教育資金を作るときの「唯一の落とし穴」
- 「大学入学2年前からのシフト戦略」で元本割れを防ぐ
- 3タイプ別・最適解の選び方
- 「定期保険+NISA」という最強の組み合わせ
- まとめ:数字が出た。あとはあなたが選ぶだけ
1. まず「学資保険の実質利回り」を計算してみる
議論の出発点として、学資保険の「返戻率」を正確に理解するところから始めます。
学資保険の返戻率とは
返戻率(へんれいりつ)とは、「払い込んだ総保険料に対して受け取る総額の割合」です。
大手生命保険会社の代表的な学資保険で、現在提示されている返戻率はおおむね105〜108%程度です。
モデルケース:月額1万円・18年払込・返戻率107%の学資保険
払込総額:1万円 × 12ヶ月 × 18年 = 216万円 受取額:216万円 × 107% = 231万円 受取超過額:+15万円
「15万円プラス!お得!」——多くの人はここで思考が止まります。しかしこの計算には重大な欠落があります。
「毎月1万円を18年間ずっと拘束された機会費用」がゼロと仮定しているのです。
返戻率107%の「本当の年利」を計算する
216万円が18年後に231万円になるということは、年率何%の複利運用に相当するのか。これを計算します。
計算式:(231 ÷ 216)^(1 ÷ 18) − 1
ただし、学資保険は「一括払い」ではなく「月払い」です。毎月1万円ずつ積み立てる場合の実質年利は、複雑な計算になりますが、概算で:
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 月払い保険料 | 1万円 |
| 払込期間 | 18年(216ヶ月) |
| 払込総額 | 216万円 |
| 満期受取額 | 231万円 |
| 実質年利(概算) | 約0.37〜0.40% |
0.4%です。
2026年6月時点の大手銀行の普通預金金利が0.1〜0.2%程度であることを考えると、「ゼロよりはマシ」というレベルです。「お子さんのための大切な教育資金」として18年間、月1万円を固定して運用する先としての利回りが0.4%。
銀行員はこの数字を積極的に提示しません。なぜなら、知ってしまったら「比較検討」が始まるからです。
2. 18年後の差額を直視する【シミュレーション完全比較】
では、同じ月1万円を18年間、学資保険ではなく新NISA(つみたて投資枠)の全世界株式インデックスに積み立てたらどうなるか。
月1万円・18年積み立て:18年後の比較
| 積み立て先 | 想定利回り | 積立元本 | 18年後の残高 | 元本との差 |
|---|---|---|---|---|
| 学資保険 | 約0.4% | 216万円 | 231万円 | +15万円 |
| 新NISA(保守) | 3.0% | 216万円 | 281万円 | +65万円 |
| 新NISA(中間) | 5.0% | 216万円 | 348万円 | +132万円 |
| 新NISA(期待値) | 7.0% | 216万円 | 432万円 | +216万円 |
※新NISAは運用益が非課税。特定口座での運用なら運用益に20.315%課税されます。
全世界株式インデックスの過去実績ベースの期待リターンは、長期では年率5〜7%程度が示されています(為替考慮後)。最も保守的な3%で試算しても、学資保険との差額は50万円。5%なら117万円の差が出ます。
月3万円・18年積み立ての場合(教育費を本格的に準備)
月1万円ではなく、本格的に教育費を準備しようと月3万円を積み立てた場合:
| 積み立て先 | 想定利回り | 積立元本 | 18年後の残高 | 元本との差 |
|---|---|---|---|---|
| 学資保険(※) | 約0.4% | 648万円 | 693万円 | +45万円 |
| 新NISA(3.0%) | 3.0% | 648万円 | 843万円 | +195万円 |
| 新NISA(5.0%) | 5.0% | 648万円 | 1,044万円 | +396万円 |
| 新NISA(7.0%) | 7.0% | 648万円 | 1,296万円 | +648万円 |
※学資保険は商品・会社により月額上限があります。月3万円規模はご契約内容によります。
5%の期待利回りで18年積み立てると、学資保険との差額は351万円。子どもの大学4年間分の授業料(私立文系)を超える差が出ます。
3. インフレが加わると学資保険の「本当の損失」が見えてくる
学資保険の実質利回り0.4%が「いかに問題か」をもう一段掘り下げます。
インフレが意味すること
2026年現在、日本のインフレ率は年率2〜3%前後で推移しています。インフレ率が2%ということは、今年100万円で買えるものが、18年後には約143万円出さないと買えなくなる(2%複利で18年)ということです。
今の100万円の「18年後の実質購買力」= 100万円 ÷ (1.02)^18 ≈ 70万円
つまり、名目では「231万円受け取った」としても、インフレ調整後の実質価値は:
231万円 ÷ (1.02)^18 ≈ 161万円
払い込んだ216万円が、実質的には161万円の価値しかない受取額になる。「返戻率107%」の実態は、インフレを考慮すると「実質リターンがマイナス」なのです。
これは学資保険の設計上の問題というより、「インフレ環境下での固定利回り商品の限界」です。インフレ時代に0.4%の商品で18年間資金を縛ることのリスクを、正確に認識してください。
4. 学資保険が「完全に無駄」ではない3つの理由
ここまで読むと「学資保険はダメだ」という結論に見えますが、それは正確ではありません。学資保険には、数字の利回り比較では見えない3つの固有価値があります。
理由①:保険契約者(親)の死亡・高度障害時に保険料が免除される
学資保険の最大の特徴は「保険機能」です。
契約者(通常は親)が死亡または高度障害状態になった場合、以降の保険料の払い込みが免除され、それでも満期になれば満額受け取れます。
これはNISAにはない機能です。NISAで積み立て中に親が亡くなった場合、その後の積み立てを続ける経済的な担い手がいなければ、積み立ては止まります。
「万が一、自分が死んだときでも子どもの教育費は確保したい」——この需要に応えるのが学資保険のコアバリューです。
理由②:「強制的に使えない」構造が貯蓄を守る
これは感情論ですが、重要な現実です。
NISAは自由に引き出せます。緊急の出費が生じたとき、衝動的に高額な買い物をしたとき——NISAの資金は誘惑に負ければすぐに使えてしまいます。
学資保険は途中解約すると元本割れするため(特に払込期間の中盤まで)、解約を心理的に踏みとどまらせる「強制力」 があります。
自己管理に自信がない方や「教育費専用」として絶対に使わないお金を確保したい方にとって、この「使えない構造」は価値があります。
理由③:「絶対に負けない」という確実性
NISAの期待利回り5〜7%はあくまで「期待値」です。18年後に市場が大幅に下落していれば、元本割れの可能性もゼロではありません。
学資保険は「長期保有すれば返戻率107%を確実に受け取れる」確定商品です。
「子どもの教育資金だけは絶対に元本割れしてほしくない」というリスク許容度がゼロの方にとっては、利回りより確実性を選ぶ判断は合理的です。
5. 新NISAで教育資金を作るときの「唯一の落とし穴」
新NISAによる教育資金積み立ては、期待リターンで学資保険を大幅に上回ります。しかし1つだけ、絶対に見落としてはいけない落とし穴があります。
「使う時期が固定されている」問題
株式投資は「長期保有すれば下落からの回復が期待できる」という前提で成立します。老後資金なら「まだ時間がある」と耐えられます。
しかし教育資金の使用タイミングは固定されています。
子どもが18歳になった年に、大学入学費用として現金が必要になる——これは延期できない。
そのタイミングで市場が暴落していたら?
2008年のリーマンショックを例にとると、S&P500は2007年10月のピークから2009年3月にかけて約57%下落しました。もし大学入学資金として積み立てていた500万円が、入学直前に215万円になっていたとしたら……。
これがNISAで教育資金を作る際の唯一にして最大のリスクです。
6. 「大学入学2年前からのシフト戦略」で元本割れを防ぐ
この落とし穴は、適切な「出口戦略」を設計することで大幅に緩和できます。
年齢別リスク低減スケジュール
| 子どもの年齢 | 積み立て戦略 | ポートフォリオ(目安) |
|---|---|---|
| 0〜12歳 | 全額・株式インデックス積み立て | 株式100% |
| 13〜14歳(中1〜2) | 株式積み立て継続 + 一部を安全資産へ移行開始 | 株式80% / 安全資産20% |
| 15〜16歳(高1〜2) | 安全資産への移行を加速 | 株式50% / 安全資産50% |
| 17歳(高2〜3) | 大幅に安全資産へシフト | 株式20% / 安全資産80% |
| 18歳(受験・入学) | 使用分を安全資産から切り出し | 使用額は現金・個人向け国債で確保 |
ここで言う「安全資産」は個人向け国債(変動10年)・普通預金・MRF等を指します。
具体的な移行のやり方
NISAの売却は非課税で行えます(利益に税金がかからない)。子どもが15〜16歳になったら、NISA口座の株式インデックスファンドを徐々に売却し、個人向け国債に移し替えていきます。
「積み立ては株式インデックスで最大化、使う2〜3年前から安全資産に”着地”させる」
この「仕込み期間 × 着地期間」の設計がNISAで教育資金を作る際の鉄則です。
「3年前シフト」で暴落リスクがほぼゼロになる理由
過去の主要な暴落で、株式市場が3年以内に回復しなかったケースは歴史上ほとんどありません(コロナショックは5ヶ月で回復、リーマンショックでも5〜6年)。
大学入学3年前に安全資産に着地させれば、仮にそのタイミングで暴落が来ても「使うのは3年後」ですので回復を待てる可能性が高まります。完全ではありませんが、「入学直前に暴落で売却を余儀なくされる」という最悪シナリオを回避できます。
7. 3タイプ別・最適解の選び方
「結局、学資保険とNISAどちらが正解か」——これは正直、属性によって答えが変わります。3つのタイプで整理します。
タイプA:共働き・世帯年収900万円以上・自己管理できる
→ 新NISAで教育資金を積み立てる(学資保険は不要)
理由:
- 年収が高く節税効果も大きい
- 万が一への備えは定期保険(後述)で安く確保できる
- 18年間の積み立てで100〜200万円超の差額が出る
推奨設計:
- NISAつみたて投資枠:月3万円(全世界株式インデックス)
- 子どもが15歳になったら着地計画をスタート
- 親の死亡保障は収入保障保険(月1〜2万円)で別途確保
タイプB:片働き・住宅ローンあり・貯蓄の自己管理に不安
→ 学資保険(少額)+ 新NISAの組み合わせ
理由:
- 学資保険で「絶対に使えない最低限の教育費」を確保
- 残りをNISAで積み立てて期待リターンを高める
- 「全部NISAだと暴落時に使いたくなるかもしれない」という不安を学資保険でヘッジ
推奨設計:
- 学資保険:月0.5〜1万円(最低限の保障目的)
- NISAつみたて投資枠:月2〜3万円
- 合計月3〜4万円で二刀流
タイプC:金融知識が少ない・「絶対に元本割れは嫌」
→ 学資保険を選ぶ(ただし比較の上で納得して選ぶ)
理由:
- 「利回りは低いが確実性が高い」という価値判断は合理的
- 投資の知識・経験なしに株式インデックスを18年持ち続けるのは実は難しい
- NISAを途中で解約してしまうリスクがあるなら学資保険のほうが結果的に良い
ただし「なんとなく銀行に勧められたから」ではなく、「利回り0.4%と承知した上で、確実性を選ぶ」という合理的な判断として選んでください。
8. 「定期保険+NISA」という最強の組み合わせ
タイプAの方に特に知ってほしい、最も合理的な組み合わせがこれです。
学資保険の「保険機能」だけを切り出す
学資保険の低い利回りの原因のひとつは、「保険料(死亡保障コスト)」が含まれているからです。保険と貯蓄が抱き合わせになっている。
これを分離します。
① 死亡保障:収入保障保険(定期保険)で別途確保
月1〜2万円程度の保険料で、被保険者(親)が死亡した際に毎月一定額を保険金として受け取れる「収入保障保険」に加入します。
たとえば月20万円・子どもが22歳になるまで支払われる収入保障保険に加入しておけば、親の万が一の際も子どもの生活費・教育費は継続して確保できます。
② 教育資金の積み立て:NISAで高利回りを追求
保障を外注した分、積み立て部分はNISAで運用し、利回り差(0.4% vs 5〜7%)を最大化します。
コスト比較
| 方法 | 月額コスト | 18年後の教育資金(5%想定) | 死亡保障 |
|---|---|---|---|
| 学資保険のみ(月1万円) | 1万円 | 231万円(確定) | 保険料免除のみ |
| 収入保障保険+NISA | 0.8万円+1万円=1.8万円 | 約348万円(期待値) | 毎月20万円×18年 |
保険料は少し増えますが、死亡保障の質が圧倒的に上がり、教育資金も117万円増える(5%期待値)。
「学資保険1本」より「収入保障保険+NISA」のほうが、同じコストで保障も運用も上回るケースが多い——これが元銀行員が勧めない「本音の設計」 です。
9. まとめ:数字が出た。あとはあなたが選ぶだけ
感情論を抜きに、数字が示す結論は明確です。
| 比較項目 | 学資保険 | 新NISA |
|---|---|---|
| 実質年利 | 約0.4% | 3〜7%(期待値) |
| 18年後の差額(月1万円) | — | +50〜216万円 |
| インフレ対応 | 不可(実質マイナス) | 対応可(株式は実物資産) |
| 元本保証 | あり(長期保有時) | なし(元本割れリスク) |
| 死亡保障 | あり(保険料免除) | なし(別途保険が必要) |
| 途中解約 | 元本割れ | 自由(非課税で売却可) |
| 自己管理の必要性 | 不要 | 必要(着地戦略が鍵) |
18年後に「笑うのはどちら」という問いへの答えは:
積み立てを継続できて、大学入学前に安全資産に着地できれば、NISAが笑う。 逆に、途中で解約したり暴落のタイミングで売らざるを得なかったりすれば、学資保険のほうがマシだった結果になる。
「NISAが有利かどうか」ではなく「あなたがNISAを18年継続できるかどうか」——これが学資保険 vs NISA 論争の本質です。
自信を持って「続けられる」と答えられる方は、NISAで教育資金を設計してください。自信がない方は、学資保険(少額)とNISAのハイブリッド、または「収入保障保険+NISA」という分離型を選んでください。
学資保険より新NISA。まずは“口座”を用意しておく
記事の結論どおり、教育資金は学資保険より新NISAでの運用に分があります。ただしNISAは証券口座がなければ始められません。松井証券はNISA・iDeCoに対応し、口座開設・維持は無料。迷っているうちに時間(複利)を失わないよう、先に口座だけ用意しておくのが賢明です。
- NISA・iDeCoに対応。口座開設・口座維持は無料
- 創業100年超の老舗ネット証券。電話サポートも充実で初心者に安心
- スマホから最短で申し込み完了
※手数料・キャンペーン等の詳細は公式サイトでご確認ください。
✅ 教育資金設計チェックリスト
- [ ] 子どもが18歳になるまでの積み立て可能年数を確認した
- [ ] 月の積み立て可能額を家計から逆算した(住宅ローン返済後の余剰資金)
- [ ] 自分の「リスク許容度」(元本割れを受け入れられるか)を正直に評価した
- [ ] 親の死亡保障が十分かを確認した(学資保険の保険料免除だけでは不十分)
- [ ] 「収入保障保険+NISA」という分離設計を検討した
- [ ] 子どもが15〜16歳になったらNISAの安全資産シフト計画を立てた
- [ ] 学資保険を選ぶ場合、「返戻率107%=年利0.4%」を承知した上で選んでいる
💡 「自分のケースはどちらが有利か」——“我が家の数字”で試算する
「学資保険かNISAか」は、家庭の年収・住宅ローン状況・既存の死亡保障・リスク許容度によって答えが変わります。この記事で出した数字は「一般モデル」であり、あなたの家庭の数字ではありません。
「我が家では月いくら積み立てれば、いつまでに教育資金が確保できるか」——これは自分で試算できます。
▼ 教育費プランナーで「我が家の教育資金プラン」を試算する
子どもの年齢・進路・目標額を入力するだけで、いつ・いくら必要かと、毎月の積立額の目安を試算できます。学資保険とNISAの比較も「我が家の数字」で再現できます。
💬 次に読むべき記事
- 📝 「NISA+特定口座」で作る子育て世代の高配当株ポートフォリオ — 教育費を「売らずに受け取る」インカムゲイン設計の実践編
- 📝 iDeCoと住宅ローン控除の「干渉」問題。損しないための優先順位 — 月の積み立て設計とiDeCoの優先順位
本記事の数値・利回りは2026年6月時点の情報に基づく試算・参考値です。投資にはリスクが伴い、元本保証はありません。保険商品の内容は会社・プランにより異なります。個別の判断は専門家にご相談ください。


コメント